こんにちは。
現役内科医ママの、ゆずです。
先日、生後6ヶ月の息子が突発性発疹にかかりました。
3日くらい高熱が出て、しかも日中も夜もずっと高い熱が下がらない。
「突発性発疹…かな??」
と思ったものの、小さい赤ちゃんの高熱はやっぱりちょっと心配でしたね。
突発性発疹は、ほとんどの赤ちゃんがかかる病気です。
ですが、
・赤ちゃんの初めての高熱で、焦る
といった感じで、ドキドキするパパ、ママは多いんじゃないかな〜と。
この記事では、そんな突発性発疹について、
・突発性発疹とはどんな病気か
・症状と経過
・おうちでのケアのポイント
・小児科受診の目安
・突発性発疹で多い「熱性けいれん」の対処法
・突発性発疹と紛らわしいけど、見落としてはいけない他の病気
・保育園の登園基準
こんな感じで、詳しく解説します。
と思ったあなた!
突発性発疹は2回かかることもあるって、ご存知ですか?
ということで、1回かかった人も一応見ておくと安心です。
では、始めましょう。
目次
突発性発疹ってどんな病気?
突発性発疹(とっぱつせいほっしん)は、生後4ヶ月〜1歳半頃のお子さんに多い、突然の高熱と、熱が下がる頃に出る発疹(皮膚の赤いボツボツ)が特徴的な病気です。
では、もう少し詳しく解説していきましょう。
2〜3歳頃までに、ほとんどの子どもがかかるウイルス性疾患
突発性発疹は、2〜3歳頃までにほとんどのお子さんがかかる、とってもポピュラーな病気です。
原因は主に、
・ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)
というウイルスに感染することで起こります。
一般的には、ウイルスに1度感染すると免疫がつき、その後は感染しなくなります。
突発性発疹にかかった後、ウイルスは体から消え去るのではなく、体の中にこっそり潜んでいる状態になります。
ガンの治療などで強い免疫不全状態になってしまうと、潜んでいたわずかなウイルスが急に暴れ出す『再活性化』が起こる場合もありますが、ほとんどの人は何事もなく経過します。
生後4ヶ月〜1歳代に多い
突発性発疹は、ほとんどの人が2歳までにかかる病気。
国の『感染症動向調査』によると、突発性発疹と診断・報告された患者さんの99%が0〜2歳とされています。
そして、研究のために実施された血液検査の結果からは、2〜3歳までにほとんどの子どもが突発性発疹を経験していることが示されています。
妊娠中に、赤ちゃんはお母さんから免疫を担当するたんぱく(免疫グロブリン)をもらって、生まれてきます。
ほとんどのお母さんが突発性発疹経験者であるため、免疫たんぱくの効果が切れる生後4ヶ月頃までは、赤ちゃんは突発性発疹にはかかりません。
突発性発疹は2回かかることがある
先ほどご紹介したように、突発性発疹には原因となるウイルスが主に2種類ああります。
なので、2回かかることもあります。
2回目はないと思っていると、慌ててしまうこともあると思いますので、2回ってこともあるんだ〜と心に留めておいて下さいね。
うちの子、突発性発疹にかかったことないんです…は「不顕性感染」の可能性大
ほとんどのお子さんがかかる突発性発疹ですが、
うちの子、もう5歳だけど突発性発疹やってないんだけど??
っていうママさんも、多くいるでしょう。
うちも、上の娘はそうです。
実は、突発性発疹は不顕性(ふけんせい)感染が多い病気です。
不顕性感染とは、
『かかったと気づかないうちに、実はかかっていた』
という状態のこと。
突発性発疹は、高熱の後に発疹が出て初めて「突発性発疹ですね。」と診断されます。
ですが、実は全ての症状が出そろわないケースが少なくありません。
鼻水とか熱はあったけど、発疹は出なかった…
といういつかの風邪が、実は突発性発疹だった、ということが、20〜40%くらいで起こります。
だから、かかってないな〜と思っても、全然変ではありません。
突発性発疹は、家族の唾液から感染すると言われている
突発性発疹の原因となるウイルスは、1度かかったことのある人の唾液の中に潜んでいます。
その唾液から、まだかかったことのない人に感染していきます。
なので…
突発性発疹は、一緒に暮らす家族から赤ちゃんに感染することが多いんです。
一方で、感染力はあまり強くなく、保育園などで1人出たからといって、園で流行するようなことはありません。
流行しやすい季節は特にない
感染力があまり強くなく、赤ちゃんと一緒に暮らす家族から感染する機会が多い、突発性発疹。
なので、流行しやすい季節というのは、特にありません。
春、夏、秋、冬、いつでもかかります。
突発性発疹がどんな病気なのか、ここまでの所を簡単におさらいしますね。
・2〜3歳頃までにほとんどの人がかかるとてもポピュラーな病気
・生後4ヶ月頃から1歳くらいに多く、家族の唾液からうつる
・2回かかることもあるが、それは原因ウイルスが主に2種類あるため
・20〜40%の人は、気づかないうちにかかっている
・感染力は強くなく、流行しやすい季節は特にない
うんうん。こんな病気ね…
と、だいたいどんな病気なのかがわかった所で。
次は、突発性発疹の症状と、どんな経過になるのかについて、詳しくお伝えします。
突発性発疹の症状と経過
突発性発疹は、38℃以上の高熱と、熱が下がる頃に出る発疹が特徴の病気です。
では、その特徴や一般的な経過を、もう少し詳しくお伝えしますね。
3日くらい高熱が続いた後、熱が下がる頃に発疹が出る
突発性発疹では、38〜40℃程の高熱が3日くらい続きます。
そして4日目頃にやっと熱が下がってきたな〜と思ったら、体のあちこちに赤い発疹が出現するというのが、典型的な経過です。
突発性発疹の熱は、昼も夜も高熱となる「稽留熱」タイプ
突発性発疹の熱は、昼も夜も高熱が出るタイプを取ることが多いです。
ずっと熱が出るパターンで発熱することを、「稽留熱(けいりゅうねつ)」と言います。
高い熱の割には元気が良いことが多いのも、突発性発疹の特徴です。
きめ細やかで押すと消える赤い発疹が、体幹から全身に広がる
日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」より引用
突発性発疹の大きな特徴である『発疹』は、
・場所によっては集まりすぎて全体が赤く見えることも
・押すと消える(紅斑と言います)
・体幹(胸、お腹、背中)から始まり、顔や手足に広がる
・かゆみはあまりない
・数日のうちに、すっかりきれいに消失する
といった特徴があります。
ただし、発疹だけで突発性発疹かどうかを判断するのは危険です。
なぜなら、『発疹+発熱』というパターンの病気は他にもたくさんあるからです。
専門の先生でも、必ず病気の経過や症状を総合して判断しているので、発疹については参考程度に留めておいて下さいね。
風邪の様な鼻水・咳や、下痢、嘔吐などもみられる
突発性発疹では、高熱+発疹の他に、
・咳
・軽い下痢
・軽い嘔吐
など、風邪や胃腸炎の様な症状が出ることがあります(出ないお子さんもいます)。
上記の他に、
・リンパ節が腫れる
といった症状が出ることもあります。
熱が下がると不機嫌に
突発性発疹は、別名「不機嫌病」と呼ばれることがあります。
そう。
赤ちゃん、ちょっと(かなり?)不機嫌になるんですよ・・・
ただね、それは熱が下がる頃のお話。
高い熱が出ている期間よりも、解熱して発疹が出ている期間に不機嫌となりやすいため、
とか、
みたいなことも、起こります。
うちはコレ。(泣)
ママさん、大丈夫です!
数日の辛抱で、元の赤ちゃんに戻りますからね(^^;)
【図解】突発性発疹の症状と経過を一目でチェック!
では、ここまで解説してきた症状が、いつ、どれくらいの期間みられるのかを図解しておきますね。
突然の高熱に、風邪なのかな?という症状。
ちょっとお腹も緩い…
ミルクやおっぱいはよく飲むし、食欲はあるなぁ…
元気はあるけど、高熱だし、病院どうしようかなぁ…
なんて、お母さんを悩ませます。
3、4日で熱が下がってきたなと思ったら、全身に発疹ができて小児科を受診。
と診断がつき、一安心の頃は赤ちゃんずっと不機嫌で抱っこ抱っこ…(泣)
こんな経過が多いです。
ただし、今お話したような症状が、全部出る訳ではないことに注意が必要です。
重要なポイントをあえて1つ挙げるとすれば、
という所ですね。
高熱が出る他の病気を見分ける際にも大切になりますので、ここはぜひ押さえておいて下さい。
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突発性発疹、ホームケアのポイントは?
突発性発疹の原因は、HHV-6、HHV-7というウイルスでしたね。
ウイルスが原因なので、細菌に効く『抗生物質』は無効です。
また、原因ウイルスに対して効果のある『抗ウイルス薬』は存在しますが、一般的に突発性発疹に使用することはありません。
と、いうことで…
突発性発疹に対する治療は、
・症状を和らげるためのお薬(主に解熱剤)
ということになりますが、ここで1つ大きな問題が。
その名も
「突発性発疹かどうかは、熱が下がって発疹が出ないとわからない」問題!!
何しろ、最初は突然高熱が出ているだけ。。。
症状もいまいちパッとせず、熱の原因が分からないわけです。
「突発性発疹」という病気が頭をよぎりますが、違うかもしれない。
もしかしたら、もっと別の病気かも?
インフルエンザ?
胃腸炎?
麻疹?
か…川崎病??
いやいや、普通の風邪で高熱なだけかも?
小さな赤ちゃんの高熱ですから、頭の中ぐるぐるしますよね。
ここで大切なのは、
『この高熱は、家で様子を見てもいいやつなのか、受診が必要なのか?』
の見極めです。
ということで、ホームケアについては
(1)小児科を受診すべきかどうかを見極める5つのポイント
(2)お家でのケアのポイント
について、解説します。
これは小児科受診すべき?見極めのための5つのポイント
突発性発疹かどうかは、まだわからない…
赤ちゃんが高熱を出してしまった、その時に。
あなたがお子さんを小児科へ連れて行くかどうか見極めるためのポイントを5つ、ご紹介します。
1. 生後3ヶ月未満の乳児である場合
あなたのお子さんが生後3ヶ月未満で38℃以上の熱が出たのであれば、迷わず小児科を受診して下さい。
なぜなら、髄膜炎などの命に関わる感染症の可能性も考えながら、慎重にみる必要があるからです。
突発性発疹かどうか、という観点で言いますと…
生後3ヶ月未満の場合はお母さんからの免疫がまだ残っている時期なので、突発性発疹である可能性は低いです。
だからこそ余計に、すぐ受診です!
2. 極端に機嫌が悪い場合
小さい子は自分の症状を言葉に表すことができません。
だるいのも、お腹が痛いのも、息苦しいのも、頭が痛いのも、気持ちが悪いのも、『態度』に表すしかないんです。
それが、『機嫌が悪い』という風に大人の目には写ります。
まぁ、高熱が出れば、多少は機嫌が悪くなるでしょう。
例えば、いつもよりも抱っこが多いな〜とか、寝ていても泣いて起きちゃうな〜とか。
でも、ママやパパの目から見て
と感じるのであれば、迷わず小児科へGO!です。
余談ですが、私がお世話になった小児科の部長の先生は
「親御さんの『いつもと様子が違う、機嫌が悪い』という言葉は、軽く扱ってはいけない。」
と教えてくれました。
赤ちゃんは言葉が話せないし、症状も表現できません。
それを肌で感じているのは、いつも一緒に過ごしているママやパパなんです。
赤ちゃんといつも一緒に過ごしている人の言葉を大切にする。
小さいお子さんを診る機会が減った今も、私が肝に命じている言葉です。
3. 母乳やミルク、水分が摂れない場合
まだ母乳・ミルクを飲む赤ちゃんであれば、母乳やミルクをあまり飲んでくれない場合。
卒乳しているお子さんであれば、食事はともかく、ゼリーや水分すらわずかな量しかとれない場合。
これは、脱水が懸念される状況です。
子ども、特に赤ちゃんは大人と比べると、格段に脱水になりやすい。
大人ならこれくらい大丈夫!という程度の状況でも、赤ちゃんはあっという間に脱水になります。
脱水である場合には、
・脱水を改善するために点滴を行う
などの処置が必要となる可能性がありますので、小児科を受診しましょう。
4. おしっこの量や回数が少なく、色が濃い場合
水分がとれなかったら小児科へ!とお伝えしましたが…
ということもありますよね。
特に、母乳育児の場合は飲んだ量がわからないため、判断が難しいと思います。
そんな時、ぜひ指標として観察してほしいのが「おしっこの量や回数、色」。
既に脱水になっている場合には
・おしっこの色がやけに濃い
というサインが現れます。
これらの症状は突然出るのではなく、徐々に出るので…
お子さんが発熱したら、おしっこは要チェック。
「ちょっと少ないかな〜」と感じたら、こまめに水分を勧めるようにして、脱水を防ぎましょう。
それでもおしっこの量が増えない、色も濃くなってきた…となれば、それは脱水のサイン。
小児科受診のタイミングです。
5. 元気がない、ぐったりしている、反応が悪い
始めは『機嫌が悪い』という態度で表された症状が重くなると、
『ぐったりしている』
『反応が悪い』
といった状態に。
これは赤ちゃんの緊急サインかもしれないと思って下さい。
また、『けいれん』があった時も必ず受診が必要です。
突発性発疹の時に起こりやすい『熱性けいれん』については、この後詳しくお伝えしますので、そちらを参考にしてください。
お子さんが『元気がない』『ぐったりしている』『反応が悪い』場合。
小児科を受診するのはもちろんですが、休日や夜間でも行くべきか、救急車を呼ぶべきか、判断する必要があります。
休日や夜間にどうすべきか迷ったら、子ども医療電話相談を利用しましょう。
子ども医療電話相談事業とは、
・#8000は全国共通、かけるとお住いの各都道府県の窓口につながるシステム
・子どもの症状について、小児科医師や看護師に電話相談できる
というものです。
ご家庭で「どうしよう…」と悩んだ時は、ぜひ利用を。
発熱時のお家でのケア、4つのポイント
小児科を受診した方が良いのがどんな時なのか…が分かったところで、次はお家でのケアについて解説します。
発熱の場合のお家でのケアは、『いかに脱水を防ぐか』が一つ重要なポイントとなります。
脱水を防ぎつつ、赤ちゃんになるべくゆっくり、ゆったりと過ごしてもらうためのポイントを4つにまとめました。
1. こまめな水分摂取
脱水を防ぐために重要なのは、こまめな水分摂取。
母乳、ミルクを飲んでいるお子さんであれば、基本的には母乳・ミルクが良いです。
すでに母乳やミルクを卒業されているお子さんの場合は、
・麦茶
・ゼリー、ゼリー飲料
・おすまし
などを、お子さんの好みに合わせてこまめにあげて下さい。
離乳食が始まっていたり、離乳食を完了しているお子さんの場合、
と思うかもしれませんが、食事は無理させなくてもOK。
嘔吐がなく、下痢の症状がないか軽い場合で、本人が欲しがる場合にはあげてもいいですが、栄養が、栄養が…と慌てる必要はゼロ。
大人だって、高熱の時は食欲が無くなる時、ありますよね?
赤ちゃんだって同じ。
栄養をつけてあげようと無理に食事をすすめる必要はなく、それよりは脱水にならないように、口当たりの良いもので水分をしっかりと取れることの方が大切です。
特に、突発性発疹の場合は下痢や嘔吐などのお腹の症状が出る場合も。
下痢が悪化してしまうと脱水になりやすくなってしまいます。
もしお子さんが食べたがる場合でも、お腹に優しいものを無理のない範囲で…にとどめておきましょう。
2. 解熱剤を上手に使う
小さいお子さんの場合、解熱剤を使うかどうかについては、色々と想いがあるかもしれませんね。
例えば、
「解熱剤を使うと、病気の治りが遅くなるんじゃないかな…」
「熱が高いのは心配だから、とにかく熱を下げてあげたい!」
「熱性けいれんが心配だから、解熱剤を使いたい(使いたくない)」
などなど。
結論から言うと、解熱剤を使ったからってむやみと病気が長引くわけではないです。
それに、解熱剤を使っても使わなくても、熱性けいれんの発症にはあまり影響しないというデータも。
(インフルエンザの場合は、高熱を下げずに放っておくと脳にダメージがあるかもってデータも、一部ありますが)
では、解熱剤はどんな時に使うのが良いのでしょうか…??
これは先生によっても意見が違うかもしれませんが…
私は、熱が高いせいで食事が取れない、ゆっくり眠れない(休めない)時の使用をお勧めしています。
つまり…
高熱で不機嫌でミルクや水分が取れないけれど、熱が下がると飲んでくれる。
→これは使っちゃいましょう。
高熱で夜中も度々泣いて起きてしまうけれど、熱が下がるとゆっくり眠れる。
→これも使っちゃいましょうか。
こんな感じ。
逆に…
熱は高いけれど、なんだか機嫌もよくて遊んでいるし、ミルクも飲めてる。眠れてる。
こんな時は使わなくてもいいと思います。
お子さんが良い状態を保てるように、解熱剤を上手に活用して下さいね。
3. 着せすぎ、暖めすぎによる『うつ熱』に注意
熱があると寒気がするんじゃないか…と思って、たくさん着せたり、お布団の枚数を増やしたりしたくなりますが、実はこれ、あまり必要ありません。
また、お部屋を暖かくしすぎる必要もありません。
小さいお子さんは、体温調節機能が未熟。
環境によって体温が左右されやすいため、着せすぎると熱がこもって「うつ熱」という状態になり、熱が下がりにくくなるため、むしろ着せすぎ・暖めすぎに注意が必要です。
お部屋は、普通に快適に過ごせる室温でOK。
着るものを増やすのは、熱がぐっと上がる、寒気が起こるタイミングだけで十分です。
目安としては、
・汗をかいていない
というときは、1枚多く着せてあげても良いですね。
お布団ですが、かけものが重すぎると、寝返りや呼吸もしづらくなります。
小さなお子さんは自分で布団を避けるのも難しいので、お布団はいつも通りで良いでしょう。
4. お家でゆったり過ごす
病気の時は体力を消耗するので、お家でゆったり過ごせるようにしましょう。
でも『ゆったり』というのは、じっとベッドで寝かせていなければいけないって意味ではないです。
小さい赤ちゃんに、そんなの無理ですもんね(^^;)
・お風呂やシャワーは体力を使うので、短時間で済ませるかお休み(体調を見ながら)
・外出は体調が良くなってからがおすすめ
こんなイメージで過ごしていただければ良いかと思います。
ここまでは、突発性発疹の一般的な症状と経過・治療についてお伝えしました。
次は、注意すべき症状である
・熱性けいれん
・脳症
について、解説しますね。
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突発性発疹で起こる注意すべき症状は、熱性けいれんと脳炎・脳症
突発性発疹は、多くの人がかかり、そして1週間くらいの経過でケロリと治っていく病気です。
ですが、中には心配な合併症を起こすお子さんも。
(1)パパ・ママから見てかな〜り心配してしまうけれど、案外多い『熱性けいれん』
(2)稀だけど、重篤な合併症である『脳炎・脳症』
突発性発疹を疑う高熱の時、この2つは頭に入れておきましょう。
特に、熱性けいれんは、日本では6ヶ月〜5歳のお子さんの20人に1人以上が経験します。
心の準備がないところに急にけいれんした場合と、けいれんするかも…と前もって知識や備えがある場合では、対応も全然変わってくるので、ここはぜひ押さえておいて下さい。
では、解説を始めますね。
※こちらの解説は、基本的に日本小児神経学会の熱性けいれん診療ガイドライン2015に基づいています。(小児科医師向け)
熱性けいれんは熱の上がり始めに多く、解熱剤使用とは無関係
熱性けいれんは、一般的に38℃以上の高熱の時、特に熱の上がり始めに多いと言われています。
と、聞くと。
って思うじゃないですか。
じゃあ、解熱剤でがっつり下げておけばOK?って。
ところがですね…
・解熱剤使用後、お薬が切れて急激に熱が上がった場合でも、熱性けいれんを誘発したりしない
ということが、明らかになっています。
つまり、
解熱剤を使っても、熱性けいれんは防げない。
解熱剤を使っても、熱性けいれんを増やすことはない。
ということ。
なので、先ほど解説した通り、解熱剤は熱でお子さんが辛そうな時に、上手に使って下さいね。
熱性けいれんの症状
熱性けいれんの症状は、
・白目をむく
・体を反らせるように硬くする
・手足をガクガク震わせる
・顔色が悪くなる
というのが典型的です。
中には、
というタイプのけいれんもあります。
熱性けいれんが起きた時の対応方法
もしお子さんに熱性けいれんと思われる症状が出た場合の対処法を6つのステップで解説します。
1. 子どもを安全な場所に寝かせる
けいれんをしている時に、倒れたり、転落したり、周囲のものにぶつかって怪我をしたりしないよう、安全な平らな場所にお子さんを寝かせます。
ソファーの上などは落っこちそうなので避け、床に寝かせてあげるか、広いベッドであれば中央に寝かせてもOKです。
「意識戻れ〜」という一心で、大声でお子さんの名前を呼んだり、ペチペチ叩いたりするのはNGです。
余計な刺激を与えず、けいれんの様子や呼吸しているかを観察しながら、静かに見守りましょう。
2. 落ち着いて、時計を確認
お子さんがけいれんしたら…慌ててしまう気持ち、すごくよくわかります。
ですが、ここはまず落ち着いて、時計を見ましょう。
ほとんどの熱性けいれんは、5分以内に止まります。
でもこういう時の5分って、時計を見ていないと本当に永久かと思うくらい…長い!
体感は当てになりません。
必ず時計を確認です。
3. 体や顔を横向きにする
けいれん中には、嘔吐することがあります。
吐いたものが詰まってしまうと窒息してしまうため、体や顔を横に向け、吐いたものがつまらないようにしてください。
舌を噛んでしまうんじゃないか…と、口に物を噛ませるという話を聞きますが、あれはNG。
呼吸の妨げになりますので、絶対にしないで下さいね。
4. けいれんの様子を観察する(動画に収めてもOK)
熱性けいれんの場合、5分程度でけいれんは止まることがほとんどです。
病院を受診する時にはけいれんは止まっているため、どのようなけいれんだったのかをパパ・ママが先生に説明することに。
体のどの辺りが、どんな風にけいれんしていたのかを落ち着いて観察するようにしましょう。
説明するのは難しい…という場合。
もし人手があって余裕もあれば、スマホで動画に収めて受診時に見てもらうのも1つの手です。(必ずしも、動画がある必要はありません。)
5. 5分経過してもけいれんが止まらなかったら救急車を呼ぶ
5分経過してもけいれんが止まっていなかったら、救急車を呼びましょう。
その際、
・いつ、誰が、どうして、現在どのような状況なのか
・通報している人の氏名、連絡先
・かかりつけの病院
を伝えます。
また、この時伝えた連絡先には、救急隊から連絡が入ることがあります。
連絡があったらすぐに出られるようにしておきましょう。
ところで。
住所や電話なんてさらっと言えると思っても、慌てていると案外ダメな時あるんですよね。
『高い熱が出ているな〜』という時点で、あらかじめ
・住所、連絡先を紙に書いておく
・かかりつけ病院の診察券、保険証、医療証、母子手帳をまとめておく
という準備をしておくと、何かあった時も安心です。
6. 5分以内にけいれんが止まっても、1時間以内に意識が戻るか注意する
5分以内にけいれんが止まっても、その後すぐに目を覚ますわけではありません。
ぼーっとしていたり、眠っているような状態になりますので、1時間以内にしっかりと意識が戻るか注意して観察して下さい。
もし戻らない場合には、夜間でも救急外来を受診するか、救急車を呼びましょう。
初めての熱性けいれんの場合は救急外来を受診することが望ましいです。
・夜間であれば夜間の小児救急をやっている病院へ連絡してから受診
という流れが良いでしょう。
この際、今すぐの受診が必要かどうか、直接相談してもいいですね。
逆に、すぐに受診しなくても良いのは、
・かかりつけ医より自宅で様子を見ても良いと言われている
・前回の症状と大きな変化がない
この3つがそろっているケース。
もし心配なら、先ほどご紹介した#8000で相談するとより安心です。
突発性発疹で起こる脳炎・脳症に注意
ここまでは、熱性けいれんについて説明してきました。
熱性けいれんは基本的に、後遺症が残ることもなく、起こっても元気に回復する疾患です。
ところが、けいれんが起きた時には、もっと重篤な合併症である『脳炎・脳症』にも注意しなければなりません。
脳炎・脳症を疑うサインとしては、
・意識がはっきりしない状態が続く
というものが挙げられます。
これ…熱性けいれんの対処法のところで、
脳炎・脳症は、入院して適切な治療を行う必要がある状態です。
発症すると約半数に後遺症が残り、亡くなる例もあります。
繰り返しになりますが、
・けいれんが5分以上止まらない
・意識がはっきりしない状態が続く
この2つのポイントは絶対に見逃さず、すぐに病院を受診するようにして下さいね。
「高熱+発疹」で突発性発疹と紛らわしい病気
ホームケアのポイントの所でお伝えしましたが、突発性発疹が悩ましいのは、
『熱が下がって発疹が出ないと、突発性発疹かどうかがわからない所』
です。
2歳位までの赤ちゃんで高熱が続く場合に、
・高熱が出る
・発疹が出る
この2点が共通した、絶対見落としたくない病気を2つご紹介します。
1. 麻疹(はしか)
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスが原因で起こる感染症です。
2019年時点で、日本国内では各地で麻疹の流行が続いており、免疫がなければ、いつ、どこで感染してもおかしくありません。
麻疹の場合、
(1)高熱、喉の痛みや鼻水、目が赤くなる(ひどい風邪の様な症状)
(2)口の中に白いボツボツができる、顔から始まり全身に赤い発疹が広がる
(3)熱は発疹が出る頃に一旦ちょっと下がり、また高熱になる
という経過を辿ります。
麻疹はめっちゃめちゃ感染力が強く、インフルエンザの数倍〜10倍くらい、感染が広がりやすいんです。
もし麻疹っぽいかも…という場合、
連絡なしに医療機関を受診してはいけません!!
麻疹の疑いがある患者さんは、他の患者さんに病気を移さないよう、隔離して診察します。
必ず連絡をしてから受診をする様にして下さいね。
そんな麻疹ですが、1歳の誕生日を迎えると受ける『MRワクチン(麻疹・風疹ワクチン)』で予防することができます。(生後6ヶ月〜1歳未満のお子さんは任意接種でMRワクチン接種が受けられます)
麻疹は入院となる率も高く、合併症も重くて、時に命に関わる怖い病気です。
予防接種は必ず受ける様にして下さいね。
2. 川崎病
2つ目にお伝えしたいのが、川崎病です。
川崎病、理由はわからないのですが、近年増加している病気なので注意が必要です。
川崎病の場合、
・目が充血して赤くなる
・舌が赤くプツプツした状態になる(いちご舌、と呼びます)
・全身の赤い発疹
・首のリンパ節が腫れる
・手のひらや足の裏がパンパン、てかてかになり、そのうち皮がはがれてくる
これらの症状が4〜5つ以上みられる時に、強く疑われます。
BCGの予防接種痕が赤く腫れることもあります。
川崎病、なぜ見落としちゃいけないかというと…
入院してちゃんと治療をしないと、冠動脈瘤(心臓に栄養を送る血管にできるこぶ)ができちゃうからなんです。
熱や発疹などの症状は、1〜2週間で引いていきます。
ところが、発症から2〜3週間後に冠動脈瘤ができてしまうことがあり、後々心筋梗塞や心不全などの原因となってしまうんです。
もし高熱が5日以上続き、他にも先ほど説明した様な症状が出てきている場合。
川崎病を見落とさない為に、必ず病院を受診して下さい。
さて。
「突発性発疹だった〜、良かった〜」となった場合。
保育園にはいつから登園させていいのでしょうか??
次は登園基準について解説します。
保育園の登園基準
最初の方でお伝えしましたが、突発性発疹は
・感染力は強くないので、保育園で流行したりはしない
という病気です。
なので、登園基準は『お子さんが元気に保育園に行ける状態に回復したか』が目安となります。
具体的には
・機嫌がよく元気
この2つを満たしていればOKで、発疹が消えている必要はありません。
熱が下がった後に不機嫌が訪れる病気なので、不機嫌が直った辺りから登園すればOKです。
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まとめ
この記事では、ほとんどの子がかかると言われている「突発性発疹」について解説しましたが、いかがでしたか?
最後に、この記事でお伝えしたことを簡単にまとめます。
お子さんに高熱が続いて、
となった時に、参考にしていただければ幸いです。
突発性発疹ってどんな病気?
・2〜3歳頃までにほとんどの人がかかるとてもポピュラーな病気
・生後4ヶ月頃から1歳くらいに多く、家族の唾液からうつる
・2回かかることもあるが、それは原因ウイルスが主に2種類あるため
・20〜40%の人は、気づかないうちにかかっている
・感染力は強くなく、流行しやすい季節は特にない
突発性発疹の症状と経過
・3日間くらい38℃以上の高熱が出て、熱が下がる頃に全身に発疹が出る
・熱は昼も夜も高い状態が続くタイプの出方
・きめ細やかで赤く、押すと消える発疹が、体幹から全身に広がる
・鼻水、咳が出たり、下痢、嘔吐が見られることも
・熱が下がると不機嫌になる
小児科受診を見極める5つのポイント
・生後3ヶ月未満の高熱
・極端に機嫌が悪い場合
・母乳やミルク、水分がとれない場合
・おしっこの量や回数が少なく、色が濃い場合
・元気がない、ぐったりしている、反応が悪い
特に、「元気がない、ぐったりしている、反応が悪い」は緊急のサイン。
急いで受診を!
突発性発疹のホームケアのポイント
・こまめな水分摂取
・解熱剤を上手に使う
・着せすぎ、暖めすぎに注意
・お家でゆったり過ごす
お腹がゆるくなる事があるため、食事は無理しなくてOKです。
脱水に気をつけて、ゆったり過ごしましょう。
熱性けいれんの対処方法
1. 子どもを安全な場所に寝かせる
2. 落ち着いて時計を確認
3. 体や顔を横向きにする
4. けいれんの様子を観察する
5. 5分経ってもけいれんが止まらなかったら救急車を呼ぶ
6. けいれんが止まった後、1時間以内に意識がはっきりするか確認する
・けいれんが止まった後、1時間経っても意識がはっきりしない場合
は、重篤な合併症である脳炎・脳症の可能性がある為、必ず救急受診です!!
突発性発疹と紛らわしい病気
突発性発疹と同じく発熱+発疹が出る病気で、
2. 川崎病:5日以上高熱が続く+目や手足の症状など
この2つは、見落としたくない病気です。
麻疹が疑われる場合は、事前連絡をしてから受診を。
川崎病が疑われる場合は、冠動脈瘤という心臓の重い合併症を防ぐ為に、必ず受診です!
保育園の登園基準
・熱が下がっている
・機嫌がよく元気
お子さんが保育園などの集団保育に行けるくらい、元気になっていれば登園可能。
発疹は消えていなくてもOKです!