こんにちは。
現役内科医ママの、ゆずです。
インフルエンザが猛威を振るっていますね。
この記事を書いている2019年1月時点では、インフルエンザの流行レベルマップは多くの地域で警報を示すピンクや赤に染まり、学級閉鎖や学年閉鎖も相次いでいます。
そんな時気になるのが、インフルエンザを予防する方法ではないでしょうか。
最近、テレビなどで盛んに取り上げられている予防方法に
『紅茶を飲むとインフルエンザが予防できる』
というものがあります。
テレビで最初に見た時に、
と、いうことで。
この記事では、『紅茶でインフルエンザが予防できる』という説について…
・紅茶でインフルエンザの予防ができると言われている根拠とは?
・インフルエンザ予防に効果があるかも!?おすすめの紅茶の飲み方
・子ども、妊婦さん、授乳中のママが飲むなら、どの紅茶がいい?
といったことを、内科医ママの目線で解説します。
インフルエンザを少しでも予防したい…ということであれば、読んでみて下さいね。
目次
本当に紅茶でインフルエンザが予防できるの?
『紅茶を飲むだけでインフルエンザの予防ができる』
この情報を耳にした時に、
私、疑問に思ったことは放っておけない性分でして…
科学的にどんなデータがあって、何をもって紅茶がインフルエンザ予防に有効と言っているのか、調べてみましたよ。
調べた結果、私の結論は…
でも、紅茶は大して害もないし、予防できる可能性はゼロではないから、好きなら飲んでみてもいいんじゃないかな。
紅茶は、どこのご家庭にもある手軽な食品。
しかも、飲んだからと言って健康を害することもないですよね?
十分に実証されていないとはいえ、予防効果がゼロとまでは言えないな…とは思うので。
興味があれば実践してみる価値はあると思います。
ちなみに…
まだ生まれて間もない、小さな赤ちゃんがいるわが家。
インフルエンザをどうしても家庭に持ち込みたくないので…
もちろん他の予防法はしっかりとした上で、ではありますが、元々紅茶好きの私は紅茶もいつもよりよく飲んでいますよ♪
では、紅茶にインフルエンザ予防の効果があるとされた、気になるその科学的根拠について、詳しく解説していきますね。
紅茶でインフルエンザの予防ができる!?その科学的根拠を解説
私は医師をしていることもあって、根拠のない健康食品とかは一切信じないタイプ。
紅茶でインフルエンザ予防についても、どの程度の化学的根拠があるのか、調べてみました。
ここでは、紅茶でインフルエンザの予防ができると紹介された、その根拠について解説します。
紅茶ポリフェノールがインフルエンザウイルスの感染力をなくす
インフルエンザウイルスには、表面に「スパイク」とよばれる突起状のタンパク質がたくさんあります。
ヒトに感染する際には、このスパイクがとっかかりになって、のどや鼻の粘膜にある細胞の中にウイルスが侵入します。
紅茶に含まれる「テアフラビン」というポリフェノール(紅茶ポリフェノール)には、このスパイクにくっつく性質があることを、千葉県にあるバイオメディカル研究センターの中山幹男博士が報告しました。
ちなみに、中山先生はマウスのノロウイルス研究をしている先生です。
紅茶ポリフェノールがくっついてスパイクが使い物にならなくなったインフルエンザウイルスは、細胞に侵入できなくなってしまいます。
ウイルスが細胞に侵入できない=感染しない
ということなので、紅茶にインフルエンザ予防の効果があると発表されたわけですね。
(論文:Inhibition of the infectivity of influenza virus by tea polyphenols. Antiviral Research 21, 289-299.)
これだけ聞くと、
今日から紅茶飲むわ!
「その情報だけじゃ、予防効果があるかわからないし。」と疑ってかかるのが医者というもの。
ということで、もう少し詳しくデータをご紹介していきますね。
【研究1】紅茶エキスで処理したインフルエンザウイルスは細胞表面にほとんどくっつかなかった
インフルエンザウイルスを細胞にかけると、細胞の表面には無数のインフルエンザウイルスがくっつきます。
ところが、ウイルスをあらかじめ紅茶ポリフェノールで処理してから細胞にかけると、ウイルスが細胞の表面にくっつかなかったんです。
出典:Inhibition of the infectivity of influenza virus by tea polyphenols. Antiviral Research 21, 289-299.
ニョキニョキしているのが細胞、丸いつぶつぶがインフルエンザウイルスです。
この研究結果から、
『紅茶ポリフェノールは試験管の中では、インフルエンザウイルスの感染力を奪う』
ということが明らかになりました。
【研究2】致死量のインフルエンザウイルスを2%の紅茶で処理後にマウスに投与しても、マウスの生存率100%
試験管での実験だけでは、科学的に有効性が十分示されたとは言えません。
次に行われたのはマウスでの研究でした。
中山先生は、マウスにとって致死量となる20万個のウイルスを、2%の紅茶で処理してからマウスに投与するという実験を行いました(感染症学雑誌 68(7) 824-829.)。
ちなみに、2%というのは、普段私たちが飲む紅茶の濃度と同じくらいです。
すると…
処理なしでインフルエンザウイルスを投与されたマウス10匹は10日目までにみんな死んでしまったのに対し、紅茶で処理したウイルスを投与されたマウスは40日経っても1匹も死ななかったんです。
さらに、生き残った紅茶グループのマウス10匹については、40日目に採血を行い、インフルエンザに対する抗体が体の中で作られているかどうかが検証されました。
抗体ができていれば、体内にウイルスが侵入したと考えることができます。
すると…
10匹中9匹では、抗体が検出されませんでした。
残り1匹も、わずかに抗体が検出されるに留まりました。
これらの結果からは、
・マウスが死ななかったのは、ウイルスがほとんどマウス体内に侵入しなかったから
という風に考えることができます。
【研究3】朝晩の紅茶うがいでインフルエンザ感染率が減少
これまでの2つの研究は、インフルエンザウイルスを紅茶で処理して、あらかじめ無力化してから細胞やマウスに投与するというものでした。
でも、日常生活ではあらかじめウイルスに紅茶をかけることもできないし、1日中のどを紅茶で湿らせておくことなんてムリです。
という疑問に答えるのが、3つ目の研究です。
(感染症学会誌71(6)487-494.)
この研究では、とある会社にお勤めの297人の人を2つのグループに分け、紅茶うがいを実践してもらいました。
1つ目のグループは、50℃で30分抽出した紅茶で朝晩うがいをします。
2つ目のグループは、紅茶うがいはしません。
これを、10月中旬〜3月中旬の約5ヶ月間続けてもらい、インフルエンザにかかった割合を比較しました。
すると…
何もしなかったグループではインフルエンザにかかった人が48.8%だったのに対し、紅茶うがいグループでは35.1%と、統計学的な有意差をもって感染率が低下したのです。
上記の他にも、
・紅茶をよく飲む人の方が、インフルエンザにかかりにくい傾向があった(一つの会社内のワクチン接種をしなかった人369人の調査結果)
などの報告があります。(紅茶のインフルエンザに対する感染伝播阻止効果、他)
ヒトでの医学的な実証はまだまだ足りませんが、それでも何となく期待のもてる結果ですね。
インフルエンザを予防したいなら…おすすめの紅茶の飲み方とNGの飲み方とは
ここまでで、紅茶を飲むことがインフルエンザ予防になるんじゃないか…ということをお伝えしました。
実験で使っていたのはごく一般的なティーバッグの紅茶。
特別な紅茶を用意する必要はありませんが、効果をアップさせるおすすめの飲み方と、効果をなくしてしまうNGの飲み方があるんです。
ここでは、どんな風に飲んだらいいのか、6つのポイントを解説しますね。
【ポイント1】レモンティーが一番効果が高い!お砂糖は入れてもOK
実験結果までは確認できなかったのですが…一連の研究を中心になって行った中山先生は
「レモンティーにすると効果が数倍高くなる」
と仰っています。
ということで、一番おすすめの飲み方はレモンティー。
また、お砂糖を入れても効果に変わりはなかったとのこと。
もし、
「紅茶やレモンティーが飲みにくい…」
「毎日飲んでいたら、味に飽きてきちゃった…」
ということであれば、お砂糖を足してもOKです。
【ポイント2】ミルクはNG!インフルエンザ予防の効果が無くなります
こちらもデータは開示されていないので詳細は不明ですが、ミルクを入れてしまうと、ミルクに含まれるタンパク質と紅茶ポリフェノールがくっついてしまい、インフルエンザ予防の効果はなくなってしまうそうです。
インフルエンザ予防の効果を狙うのであれば、ミルクは入れずに飲んで下さいね。
【ポイント3】ペットボトル飲料よりは、ティーバッグで入れた紅茶を
今回の実験で使われた紅茶は、いずれも茶葉から抽出された紅茶でした。
ペットボトル飲料、つまり作られてから長い時間が経った紅茶でも同じ効果が得られるとは限りません。
飲むなら、ティーバッグかリーフの紅茶にしておくといいですね。
【ポイント4】1日を通してちょこちょこ飲むのがおすすめ!
研究の内容からは、紅茶を飲んだ後、のどの粘膜に残った紅茶ポリフェノールがインフルエンザウイルスの侵入を阻止してくれると推定されます。
となると、一度にたくさん飲むよりは、1日を通してちょこちょこと飲む方が効果が期待できそうですよね?
外出の前後など、インフルエンザウイルスと接触しそうな時間に合わせて、ちょこちょこ飲むのがおすすめです。
【ポイント5】デカフェ(カフェインレス)の紅茶でも効果は変わらない
そんな場合にも、ご安心を。
デカフェ(カフェインレス)の紅茶でも、インフルエンザウイルスへの効果は変わりありません。
なぜなら、紅茶ポリフェノールはデカフェの紅茶にもしっかりと含まれているからです。
小さなお子さんや妊婦さん、授乳中のママさんの場合、カフェインの摂りすぎには注意が必要。
そんな時は、デカフェの紅茶を試してみて下さい。
私も授乳中なのでデカフェを飲んでいますが、普通においしくいただいていますよ〜♪
ちなみに、今うちにあるのはこの2つです。
クリッパーのアッサムブレンドは優しい味わいなので、5歳の娘もOK。
娘はレモンティーは苦くて苦手なので、ストレートティーで飲んでいます。
【ポイント6】インフルエンザにかかった人が積極的に飲む
こんな時、まだかかっていない人だけでなく、かかった本人も積極的に紅茶を飲んでみるのはどうでしょうか?
なぜなら、インフルエンザにかかっている人の咳やくしゃみなどに含まれるインフルエンザウイルスの一部を無効化し、感染リスクを減らせるかもしれないからです。
(データはありませんが。)
インフルエンザを家族にうつさないために。
ウイルスの排泄が続いていると考えられる、発病から6日間程度は、かかった本人に積極的に紅茶を飲んでもらうと良いと思います。
あ。
もちろん、マスクをつける、タオルを分ける、別室で過ごす、アルコールジェルを利用するなどの対処は十分にした上で、プラスアルファ程度に実践して下さいね。
…とはいえ、予防接種が一番予防効果は高い
ここまで、紅茶のインフルエンザ予防効果についてお伝えしてきました。
でも、現役内科医としては、どうしても伝えたいことがあります。
それは、
と、いうこと。
もちろん、こちらは科学的根拠もバッチリあります。
その効果たるや、紅茶で予防…の比ではありません。
インフルエンザにかかりたくないのであれば、予防接種は毎年ぜひ受けてください。
その上で紅茶も飲めば…
もしかしたら、より高い予防効果が期待できるかもしれませんね。
インフルエンザの予防接種の効果については…
【2019年10月最新】子ども・赤ちゃんや妊婦さんはインフルエンザ予防接種を!いつから?効果は?副反応は?疑問に内科医ママがお答えします

こちらで解説していますので、併せて読んでみて下さいね。
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まとめ
この記事では、紅茶のインフルエンザ予防の効果について詳しく解説しましたが、いかがでしたか?
最後に、この記事でお伝えしたことをまとめますね。
紅茶がインフルエンザ予防に効く科学的根拠
・紅茶で処理したインフルエンザウイルスの感染力が低下したことが、試験管内やマウスでの実験で報告されている
・ヒトでは、朝晩の紅茶うがいで感染率が低下したという研究がある
・ただしヒトでの研究は少なく、予防効果が実証されたとまでは言えない
インフルエンザ予防におすすめの紅茶の飲み方
・お砂糖は入れても効果に変わりなし
・ミルクを入れると効果がなくなるためNG
・ペットボトルよりは、ティーバッグかリーフで入れたお茶にする
・1日を通してちょこちょこ飲むのがおすすめ
・ディカフェ(カフェインレス)の紅茶でも効果に変わりなし
・インフルエンザにかかった人が積極的に飲んで、周囲への感染防止を
紅茶での予防は、ご自宅で簡単に取り入れられる方法だと思います。
紅茶がお好きなら、実践してみるのもいいですね。
ただ、インフルエンザ予防をするなら、紅茶だけ…ではいけません。
まず予防接種が大切ですし、他にもできることがいくつかあります。
以下の記事で、他の方法についてもご紹介していますので、参考にしてみて下さいね。
また、インフルエンザに関する様々な情報については、こちらの記事にリンクをまとめてあります。