こんにちは。
現役内科医ママの、ゆずです。
2017/2018年シーズンは、インフルエンザの流行がすごいですね。
かくいう私も、娘からうつってしまい、インフルエンザに20年ぶりにかかりました。
いや〜、辛かった!
急に出た38℃台の熱が6日間も続いて、人生最大の鼻づまりも経験し、怠いし、寒いし、食欲はないし、もう散々でしたね〜。
患者さんの気持ちをしっかり経験できた、辛くも貴重な1週間になりました。
さて、そんな私のインフルエンザ、どうやって診断したでしょうか?
インフルエンザ迅速検査?
いいえ、違います。
私のインフルエンザは、
・娘と濃厚に接触がある
・突然に発症
・高熱、寒気、筋肉痛、関節痛、寝汗がある
上記の状況と症状から、「臨床的に」診断しました。
そう、私のインフルエンザの診断に、インフルエンザ迅速検査は不必要だったんです。
今日は、そんなインフルエンザの迅速検査のお話。
・インフルエンザの検査はどれくらい正確なの?
・インフルエンザ、検査なしでも診断するのはどんな時?
・インフルエンザ迅速検査をするのはどんな時?
こんなことについて、解説していきたいと思います。
目次
インフルエンザ迅速検査の正確さはどれくらい?
まず最初に、「インフルエンザ迅速検査の正確さはどれくらいなのか?」ということについて、解説しますね。
検査の正確さを評価する基準はいくつかありますが、中でも
・感度
・特異度
この2つが代表的な指標です。
検査の正確さを評価する基準「感度」「特異度」とは?
「こういうのはちょっと苦手…」という方もいらっしゃると思います。
でも、インフルエンザの検査の正確さをお話する上で、ちょっとだけわかってもらえた方がいいので、あえて説明します。
具体的な方がわかりやすいので、インフルエンザの検査に例えてお話ししますね。
まず、感度。
確実にインフルエンザにかかっている患者さんを検査した時に、ちゃんと「インフルエンザ陽性!」という結果が出る確率が、感度です。
インフルエンザ患者さんを100人集めて、全員に検査をした場合…
感度90%の検査キットを使うと、90人は正しく「陽性」と判定されますが、10人はインフルエンザであるにも関わらず「陰性」と出ます。
次に、特異度。
絶対にインフルエンザにかかっていない患者さんを検査した時に、ちゃんと「インフルエンザ陰性!」という結果が出る確率が、特異度です。
絶対にインフルエンザではない人を100人集めて、全員に検査をした場合…
特異度90%の検査キットを使うと、90人は正しく「陰性」と判定されますが、10人はインフルエンザではないにも関わらず「陽性」と出ます。
感度と特異度、なんとな〜くで良いので、わかりましたか?
インフルエンザ迅速検査、3人に1人は偽陰性
では、インフルエンザの迅速検査の実際の感度と特異度はどれくらいなのでしょうか?
検査の感度と特異度は、使用する検査キットによっても変わってきますが…
インフルエンザ迅速検査の精度について詳しく解析をした2012年の論文によると、
・感度62.3%
・特異度98.2%
であることが報告されました。
先ほどお話した文章に当てはめてみると…
そうなんです。
絶対インフルエンザだという人を検査しても、3人に1人は間違った「陰性」の判定が出るのが、インフルエンザ迅速検査なんです。
ちなみに、特異度98.2%の方を文章に直してみると…
うん。
こちらはインフルエンザの検査として考えるならば、信頼に足る検査と言っても良さそうです。
インフルエンザ、検査なしでも診断するのはどんな時?
インフルエンザ迅速検査は「3人に1人は間違って陰性の判定が出る検査」です。
だから、この検査の使い所は「患者さんがインフルエンザに違いないから、検査で確定したい時」…ではありません。
では、どんな時に使うのか?
それは…
つまり、検査なしでも「この患者さんはかなりの確率でインフルエンザに違いない」と判断できる場合には、迅速検査を行わずにインフルエンザと診断しても問題ないんですね。
インフルエンザ迅速検査を行うかどうかの目安
では、検査なしでも「インフルエンザに違いない」と判断できるかどうかは、どの様に決めているのでしょうか?
それは、
・インフルエンザの流行状況
・インフルエンザ患者さんとの明らかな接触
・インフルエンザに特徴的な症状の有無
大まかにはこの3つの要素で決めています。
インフルエンザに特徴的な症状とは、
・筋肉痛(2点)
・悪寒または寝汗(1点)
・発熱と咳(2点)
大まかには上記の4種類です。
症状があるかどうかで点数をつけて、
3点:インフルエンザの可能性は中位(迷う!)
4〜6点:インフルエンザの可能性は高い
大体の目安ではありますが、こんな風に判断します。
インフルエンザが世間で流行している時期の、症状が3点の患者さんこそが、真にインフルエンザ迅速検査を行うべき患者さん、ということなんですね。
インフルエンザ、検査なしでも診断しちゃうのはどんな時?
では、検査しなくても「インフルエンザに違いない」と判断するのはどんな時でしょうか?
一番は、インフルエンザ患者さんとの濃厚な接触(例えば、同居の家族にインフルエンザの人がいる、など)があると分かっている場合です。
この場合には、症状が出揃っていない初期の段階でも「インフルエンザです」と診断するのが妥当です。
二番目としては、インフルエンザが流行している時期に、インフルエンザの典型的な症状が揃っている患者さんです。
先ほどの点数でいくと、4〜6点の患者さんですね。
冒頭の、私の例に戻って考えてみると、
・インフルエンザB型と診断されている娘と濃厚接触
・症状の点数は満点の6点
ということに。
なので、迅速検査はしなくても、インフルエンザと診断できたんですね。
ただし、一点だけ注意が。
小児科の場合には、明らかにインフルエンザっぽくても、迅速検査を行うケースが多いです。
理由としては、学校保健法で出席停止になるのでより正確さが求められるから…というのと、大人と比べると詳しい症状の把握が難しいから、です。
小児科の先生に聞くと他にも理由があるかもしれませんが、とにかく小児科では大人よりもインフルエンザより検査を行うハードルが低いことは、知っておくといいかもしれません。
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インフルエンザ検査を希望する軽症患者さんで、外来がパンク状態の病院も…
インフルエンザに違いない、ということでお薬をもらって帰った患者さんの中には
ですが、特に夜間救急などでは、そういう患者さんの対応に追われて、外来がパンク状態になっている病院もあるんです。
もう一度言いますが、インフルエンザの検査は、「3人に1人は間違って陰性と出る」程度の検査です。
インフルエンザであることがほぼ確実だという患者さんで検査をしても、30%以上の確率で陰性という結果が出ますが、検査が陰性でも患者さんがインフルエンザだという診断には何ら影響はありません。
もう一度受診することで…
・検査が陽性でも陰性でも、インフルエンザはインフルエンザ!
・待合室で別の型のインフルエンザをもらってしまうかもしれない
・お金も余分にかかる
・体力も消耗する
はい。いいことありません。
なので、「ほぼ確実にインフルエンザ」という診断に当てはまる方は、診断を確定するためだけに、もう一度(特に夜間救急を)受診するのはやめましょう。
もちろん、最初に受診した時とは違う症状も出てきて辛いとか、思った以上に体調が悪いとか、何か困っている場合には遠慮なくお越しくださいね。
インフルエンザ関連の記事をまとめてチェック!
当サイトには、インフルエンザ関連の記事が複数あります。
・子どもがインフルエンザに罹ってしまった時の対処方法
・粉薬を飲んでくれないお子さんへお薬を飲ませるコツ
・抗インフルエンザ薬は子どもや妊婦さんでも使える?
・出席停止期間はいつまで?
・2017/2018年シーズンで異例の流行中の「インフルエンザB型」の特徴は?
など、インフルエンザ関連の記事をまとめました。
【インフルエンザ特集!インフルエンザの予防から罹った時の対処法までを現役内科医ママが解説します】

こちらの記事から、ご家庭にあったお悩みの解決方法をチェックしてみて下さいね。
まとめ
今日は、インフルエンザの迅速検査について、お話しました。
・インフルエンザは検査なしで診断して良いケースがある
・インフルエンザの検査が陰性でも、インフルエンザと診断して良いケースもある
・症状や状況からインフルエンザと診断できる患者さんで、本当にインフルエンザだと確定するために検査をやり直すのは無意味
こちらの記事で、インフルエンザの検査は陰性だったのに抗インフルエンザ薬が処方された方や、インフルエンザの検査なしで診断された方の、疑問が解消していればいいな…と思います。
また、これから検査を受けたいと思っている方の参考になれば幸いです。